日蓮大聖人御書拝読と御法話

平成17年3月 春季彼岸会

開目抄

開目抄 (新編御書 五六三頁)
文永九年二月  五一歳

開目抄 (御書五六三頁)

 儒家の孝養は今生にがぎる。未来の父母を扶けざれば、外家の聖賢は有名無実なり。外道は過末をしれども父母を扶くる道なし。
 仏道こそ父母の後世を扶くれは聖賢の名はあるべけれ。しかれども法華経已前等の大小乗の経宗は、自身の得道猶かなひがたし。何に況んや父母をや。但文のみあって義なし。
 今、法華経の時こそ、女人成仏の時、悲母の成仏も顕はれ、達多の悪人成仏の時、慈父の成仏も顕はるれ。此の経は内典の孝経なり。
 

【意訳】

 儒教で説く親孝行は現世に限定されているので、亡くなった父母の未来を助けることはできない。ゆえに儒教で、賢人聖人と言われても名前のみあって実義はない。バラモンでは、過去・未来のことを知ってはいるが、だからといって父母を助ける道は説かれていない。
 仏の説く教えこそ父母の後生を助けるのであるから真実の賢人聖人と呼ばれるべきである。しかしながら、法華経已前の諸宗の教えでは自分自身の成仏得道さえ覚束ないのであるからどうして父母を助けることができるであろう。成仏とか追善供養等の文字のみがあって真実の義はない。
 いま法華経の時にいたって女人成仏が現実に証明されてこそ、亡くなられた母の成仏も真実となり、悪人の提婆達多が成仏の時に、初めて亡くなった父の成仏も顕れるのである。法華経はこのように父母の即身成仏を説き顕しているから、内典の孝経というのである。


【語句の意味】

○儒家=中国春秋時代の孔子を祖として起こった儒教のこと。仁・義・礼・知・信を五常といい、これを身につけることを目的とする。代々の中国・韓国では国学として重んじられ、封建社会の悪弊を生む。日本でも徳川幕府が儒教を根底にした道徳的な思想を広めたが、仏教思想が根底にある日本では、中国や韓国のように儒教絶対的社会にはならなかった。
 大聖人は、儒教の本質を鋭く見抜かれ、仁を中心とした儒教は現世のみの教えであり、親孝行を説けども来世を助ける力はない、仰せになっている。

○外家=仏教以外の教え。ここでは儒教のことをさす。

○外道=仏教以外の教えをいうが、ここではバラモン教のこと。

○内典=仏教のこと。

○女人成仏=法華経提婆達多品十二に説かれるもので、それまでの諸経では、女性は一度男性に変わってその後に仏に成る、とされていたが、この提婆品で女性の姿形のままで仏に成ることが明かされた。「女性の即身成仏」が説かれることが法華経の力の大きさを証明する一つになっている。

○達多=提婆達多のこと。提婆達多は釈尊の従兄弟であったが、悟りを開かれた釈尊をねたむばかりか、種々の危害を加え命さえ狙う悪事を働いた。しかし、前述の女人成仏と同じく、提婆達多品の中で、法華経に帰依することにより過去の罪障を消滅して仏になることが明かされている。悪人成仏も法華経の功力の大きさを証明する一つである。

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