日蓮大聖人御書拝読と御法話

平成24年2月16日 日蓮大聖人御誕生会拝読御書

寂日房御書

寂日房御書(御書・一三九三頁)
弘安二年九月一六日 五八歳

寂日房御書 (日蓮大聖人御書・一三九三頁)

 日蓮となのる事自解仏乗とも云ひつべし。かやうに申せば利口げに聞こえたれども、道理のさすところさもやあらん。経に云はく「日月の光明の能く諸の幽冥を除くが如く、斯の人世間に行じて能く衆生の闇を滅す」と此の文の心よくよく案じさせ給へ。「斯人行世間」の五つの文字は、上行菩薩末法の始めの五百年に出現して、南無妙法蓮華経の五字の光明をさしいだして、無明煩悩の闇をてらすべしと云ふ事なり。日蓮等此の上行菩薩の御使ひとして、日本国の一切衆生に法華経をうけたもてと勧めしは是なり。此の山にしてもをこたらず候なり。今の経文の次下に説いて云はく「我が滅度の後に於て応に此の経を受持すべし。是の人仏道に於て決定して疑ひ有ること無けん」云云。
 かゝる者の弟子檀那とならん人々は宿縁ふかしと思ひて、日蓮と同じく法華経を弘むべきなり。

【通解】

 日蓮と名乗ることは、誰からも教えられることなく一仏乗の義を悟った証しである。このように申せば、自慢しているように聞こえるが、道理の上から見ればそれも理解できるであろう。法華経の神力品には次のように説かれている。「太陽や月の光が暗闇を照らして明るくするように、この人が世の中にあって教えを説き、人々の悩みや苦しみを除く」と。
 「斯人行世間」の五文字は上行菩薩が末法の初めの五百年に出現し、南無妙法蓮華経の五字を高く掲げ、煩悩の根本から起こる心の闇を照らすであろう、との意である。日蓮等が、日本国の全て人々に法華経を受け持つように勧めるのは、先の「斯人行世間」と説かれるように、上行菩薩の御使としての役目からである。
 この山にあっても、怠らずに励んでいる。先の経文の次には、「私が入滅した後には、この経を受持すべきである。この人は仏の道を求めるにあっては必ず成仏の功徳を受けることは疑いがない」と説かれている。
 このような者の弟子檀那となった人々は過去世の宿縁が深いと思い、日蓮と同じように法華経を弘めるべきである。


【語句の意味】

自解仏乗 自ら仏乗を解すこと。「法華玄義」の序である「私記縁起」に天台大師の十種の徳を讃嘆する中で弟子の章安大師が述べたもの。師より教えられることなく、自らが一仏乗(法華の深義)を覚ったことをいう。
経に云く 法華経の神力品を指す。
幽冥 とても深い闇。経文では太陽や月の明かりを仏の教え、幽冥を衆生の心の悩みや惑いに譬える。
上行菩薩 法華経従地涌出品第十五に説かれる地涌の菩薩の上首。日蓮大聖人は百六箇抄で、
「上行菩薩の再誕、本門の大師日蓮」(御書・一六八四頁)
と説かれている。
末法の初めの五百年 法華経薬王菩薩本事品第二十三に「我が滅度の後、後の五百歳の中に閻浮提に広宣流布して」と説かれている。大集経には五箇の五百歳として、釈尊滅後の最初の五百年を「解脱堅固」、二番目を「禅定堅固」、三番目を、「読誦多聞堅固」、四番目を、「多造塔寺堅固」、五番目を「闘諍堅固・白法隠没」と説かれる。一番目と二番目を合わせて、「正法千年」。三番目と四番目を合わせて「像法千年」という。この正法・像法の時代には釈尊の教えで覚りを開くことが叶ったが、それ以降は釈尊の教えが力を持たなくなった。そこで、白法(釈尊の教え)が隠没(消滅)して、世の中が争いが盛んになる時代、と説かれている。この五番目を「後の五百年」ともいい、「末法の初めの五百年」ともいう。
身延で顕された通称「万年救護の御本尊」には、
「大覚世尊御入滅後、二千二百二十余年を経歴す。しかりといえども月・漢・日の三ケ国の間、いまだこの大本尊ましまさず。あるいは知ってこれを弘めず、あるいはこれを知らず。我が慈父、仏智をもってこれを隠し留め、末代のためにこれを残す。後五百歳の時、上行菩薩、世に出現して始めてこれを弘宣す」
と認められている。
無明煩悩の闇 無明惑のこと。無明惑と、見思惑・塵沙惑を合わせて三惑という。一切の迷いを三種に分けて説明する天台の教法。見思惑は、かたよった心から物事を見て起こす妄想をいう。塵沙惑は、衆生を救済する上から無数の法門を知らねばならないところ、それが叶わないこと。無明惑は、諸法が有でもなく無でもない、しかして有無に通じるという中道実相の見方に惑うこと。この無明惑が成仏を妨げる一切の煩悩の根本となる迷いであり、この無明惑を大聖人は「闇」とされ、闇に光を当て暗きところをなくすように、南無妙法蓮華経の御本尊様のお力により、一切の煩悩を取り除き成仏が叶う、と示される。


 大聖人が末法に誕生された意義ある日に参詣されました。「宿縁深厚」であることを思い、精進をいたしましょう。例年になく厳しい寒さですが、春はもうすぐです。前を向いてお題目を唱えましょう。

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