日蓮大聖人御書

日蓮大聖人御書講義・法話集:平成28年8月7日広布唱題会/日蓮正宗佛乗寺

乙御前御消息

乙御前御消息:平成新編日蓮大聖人御書(八九七頁)

建治元年八月四日  五四歳

『乙御前御消息』 建治元年八月四日 五四歳 (御書・八九七頁)

 妙楽大師のたまはく「必ず心の固きに仮りて神の守り則ち強し」等云云。人の心かたければ、神のまぼり必ずつよしとこそ候へ。是は御ために申すぞ。古の御心ざし申す計りなし。其れよりも今一重強盛に御志あるべし。其の時は弥々十羅刹女の御まぼりもつよかるべしとおぼすべし。例には他を引くべからず。日蓮をば日本国の上一人より下万民に至るまで一人もなくあやまたんとせしかども、今までかうて候事は一人なれども心のつよき故なるべしとおぼすべし

【通解】

 妙楽大師は『摩訶止観輔行伝弘決』で次のように述べております。「諸天善神は常に人を護ると雖も、必ず心の固きに仮りて神の守り則ち強し」と。これは、心の堅固な人には、必ず諸天善神の守護があります、と言う文です。この文を貴女のために引用して申し上げます。貴女の以前からのご信心は言葉で言い表すことのできないほど貴いものですが、これよりは、なお一層強盛にお励みになるべきです。その時は、いよいよ十羅刹女の守りも強くなる、と思いなさい。諸天善神のご加護の例を他の人に求めるべきではありません。この日蓮が善い例です。何故ならば、日本国の上一人より下万民にいたるすべての人が、この日蓮を害しようとしましたが、今まで無事に過ごしております。これは、「日蓮は一人になっても、法華経を強く信ずる」という強い心があるからです。

【語句】

○乙御前=佐渡流罪中、鎌倉から山海をこえてあゆみを運んだ強信な女性信徒、日妙の娘。

○十羅刹女=鬼子母神の娘で、十人の羅刹女のこと。法華経陀羅尼品第二十六には、「私たちは、法華経を読誦し受持する人の身心が衰えたり患ったりすることのないように守ります」と仏に誓ったことが説かれております。その誓いに、「法華経を受持する人を守る功徳は無量です」と述べ、法華経を受持し供養する法師を守ることを十羅刹女に勧めています。

【解説】

  当抄は乙御前宛てになっておりますが、母の日妙に与えられたもので、建治元年(一二七五年)八月四日、身延山中でお認めになりました。日妙は女性の身でありながら、佐渡や身延に大聖人様を訪ねるほどの強信者です。その信仰を、「古の御志申す許りなし」とお誉めくださり、なお一層の精進を勧められるのが当抄の目的です。
  当抄が認められた前年の文永十一年に第一回の蒙古来襲があり、翌建治元年の四月には蒙古の使者が再度訪れ、幕府は九月に竜の口で使者の首を刎ねております。このような切迫した時代背景から、「今一重強盛に御志あるべし」と仰せになるのです。

  乙御前の母は、「今まで一所懸命に信心してきたのだから」という弱い心になるようなことは決してありませんでした。しかし、後輩である平成の私たちには、「すこしもたゆむ心あらば魔たよりをうべし(少しでもご信心を怠けようとする心があれば、魔が襲ってきます)」(『聖人御難事』・一三七九頁)とのご注意を拝するまでもなく、つい怠け心が出るものです。そのようなときに、当抄の一節を思い浮かべ、負けそうになる心を励ましてまいりましょう。
  また、強い心で御本尊様の信仰を貫くならば、必ず諸天の加護があることを、日蓮大聖人様ご自身の上に示して下さっていることも忘れてはなりません。

  その功徳の現証を述べられたのが、「例には他を引くべからず」という一節です。大聖人様は「大難四箇度小難数知れず」と仰せられるように、幾多の法難を退けられました。特に、文永八年九月十二日の竜の口では、首を刎ねられようとしたその瞬間、諸天の用きで事無きを得ました。日妙も鎌倉在住でしたから、もしかしたら、竜の口に供をしていたかも知れません。そうでなくとも、四条金吾からその時の様子を詳しく聞いたことは間違いのないところです。

  世界中が不安定な方向に向かっている今日の様相を私たちの信仰から見たとき、謗法が充満している故の「結果」であることがわかります。故に、悪世末法に願って生を受けた私たちは、「一人なれども心のつよき故」の功徳を確信し、正法を伝える使命を果たさなくてはなりません。私たちの前に立ちはだかる如何なる障害も、確信ある実践により必ず乗り越えることができる、との大聖人様の御言葉を固く信じてまいりましょう。「清涼の池」は私たちの心の中にあります。暑さに負けずに大聖人様のお使いに励めば、清らかで涼しい池にたどり着きます。煩悩による灼熱地獄の生命であったとしても、「清涼の池」の水により、瞬時に冷却され、この上もない涼やかな生命に変化します。暑いときこそ、なお心を熱くして、進んでまいりましょう。
ご自愛をお祈りいたします。

 

以上


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日蓮正宗向陽山佛乗寺

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