日蓮大聖人御書

日蓮大聖人御書講義・法話集:平成28年9月11・13日日蓮大聖人御報恩御講/日蓮正宗佛乗寺

南条殿御返事

日蓮大聖人御書:『南条殿御返事』(平成新編日蓮大聖人御書・九五四頁)
建治二年三月一八日  五五歳

『南条殿御返事』 (御書・九五四頁)

 いものかしら・河のり・又わさび一々人々の御志承り候ひぬ。鳥のかいごをやしなひ、牛の子を牛のねぶるが如し。
  夫衣は身をつゝみ、食は命をつぐ。されば法華経を山中にして読みまいらせ候人を、ねんごろにやしなはせ給ふは、釈迦仏をやしなひまいらせ、法華経の命をつぐにあらずや。妙荘厳王は三聖を山中にやしなひて沙羅樹王仏となり、檀王は阿私仙人を供養して釈迦仏とならせ給ふ。されば必ずよみかゝねども、よみかく人を供養すれば、仏になる事疑ひなかりけり。経に云はく「是の人仏道に於て決定して疑ひ有ること無けん」と。南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経。

建治二年三月十八日                          日蓮 花押

謹上 南条殿御返事
橘三郎殿・太郎大夫殿、一紙に云云、恐れ入り候。返す返すははき殿読み聞かせまいらせ給へ。

《語句の意味》

○いものかしら=里芋の球茎、親芋のこと。

○河のり=川で取れる海苔。ここでは総本山の西側を流れる芝川で取れる「芝川海苔」のこと。

たんぱく質やβ-カロテン、ビタミンE、ビタミンB2、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ミネラルなどの栄養が特に豊富であり、カロテノイドの一種のβ-カロテンを多く含むので、強力な抗酸化作用が期待できる、とのことです。最近では四万十川の川海苔が有名です。

○わさび=清流に生えるアブラナ科の多年草。古くは薬として用いられた。

○かいご=殻子(かいご)の意。卵のこと。

○妙荘厳王=法華経妙荘厳王本事品第二十七に説かれる国王。

妙荘厳王本事品の粗筋を述べますと、昔々の世に、雲雷音宿王華智仏(うんらいおんしゅくおうけちぶつ)という名の仏様がおりました。そこには、妙荘厳王という王と、浄徳という夫人と、浄蔵・浄眼という二人の子がおりました。この浄蔵・浄眼は、雲雷音宿王華智仏を師として、仏道修行に励んでおりました。そして、父のために法を説いて頂くように仏に願い、やがて、家族そろって法華経を聴聞することで成仏を遂げることができました。

さらに、この四人の過去世の因縁が説かれます。ある所で四人の比丘が仏道修行に励んでおりましたが、四人そろって修行に励むことは難しいものがありました。そこで、他の三人が修行に専念できるように、と一人の比丘が修行を助ける役目を引き受け、三人の世話をすることにしました。そのお陰で三人は仏道修行を成じて、覚りを得ることができました。しかし、身の回りの世話を買ってでた者は覚りを得ることはできませんでした。ところが、世話をした者は仏道修行を助けた功徳によって、妙荘厳王という名の国王として生まれ変わり、三人のうち一人は浄徳夫人、他の二人は浄蔵・浄眼と言う子になって父王を導くことになりました。やがて妙荘厳王は、法華経の会座において華徳菩薩、浄徳夫人は光照荘厳相菩薩、浄蔵・浄眼は薬王・薬上菩薩として法華経を聴聞し、即身成仏の大功徳を得ることができた、というものです。

○三聖=妙荘厳王が過去世に世話をした三人の修行者のこと。天台大師の法華文句に詳しく説かれています。

○沙羅樹王=法華経妙荘厳王品で、未来世において仏に成ることができるという記別を受けた時の名。

○檀王=須頭檀王のこと。釈尊が過去世で修行をしていた時の名。法華経提婆達多品第十二に説かれる。経文には、法を求めるために、国王の位を捨てて阿私仙人に、住む所・水や木の実の飲食や薪などを供養して千年の間使えた、とあります。

○阿私仙人=提婆達多の過去世の姿。

○是の人仏道に於て決定して疑ひ有ること無けん=法華経如来神力品第十二の文。「法華経を修行する人は、必ず仏になることができる。疑いはない」という意味です。 

○橘三郎・太郎大夫=二人とも詳しいことは伝わっておりません。

○ははき殿=伯耆殿。日興上人のこと。十三歳で大聖人様のお弟子になった時、伯耆房日興というお名前を頂戴しました。

《御在世当時の座談会》

 この御書は建治二年(一二七六年)三月十八日に身延で認められ、富士上野の南条時光殿に与えられたものです。この時大聖人様は五十五歳、時光殿は十七歳、日興上人は三十歳です。身延入山後二年がたっております。
 当抄は、南条時光が橘三郎・太郎大夫とともに、里芋や川海苔、またワサビの御供養を申し上げたことに対する御返事の御書です。御書の最後に、「橘三郎殿・太郎大夫殿、一紙に云云、恐れ入り候」とあることから、三名が協力して御供養を申し上げたことがわかります。大聖人様は、「一人ひとりに手紙を出すところではあるが、まとめてしまって恐縮である」と述べられています。この一文から、大聖人様と当時の法華講衆との、親密な師檀関係がわかるように思いますが如何でしょうか。続いて、「返す返すははき殿読み聞かせまいらせ給へ」とあります。伯耆殿に何度も読んでもらいなさい、そうすれば、日蓮の教えが必ず理解できるでしょう、との御意です。

 大聖人様のお手紙を日興上人が読み聞かせて下さっている様子を想像してみましょう。三月十八日は現代の暦になおしますと、四月十日にあたります。春本番を迎え、田起こしの農作業が終わった後に、南条宅のいろり端で、赤々と燃える炎を頼りに、日興上人がお手紙を読んで下さっております。南条時光殿や上野尼、また橘三郎や太郎大夫等の法華講衆が真剣に聴聞し、時には質問もあります。鎌倉時代の富士・上野地区の座談会です。今日の座談会の原点は御在世の時にあることがわかります。

 平成の私たちにしてみれば、夢のようなことです。後年、熱原の法難が起こった時、文字も読めないような人たちが、退転することなく信心を貫き通すことができたのも、大聖人様と日興上人の師弟相対のお姿を通して、法華講衆の確信が深められた結果であると思います。

《ポイント》

 「鳥のかいごをやしなひ、牛の子を(母)牛がねぶるがごとし」とある「鳥」の立場は、南条時光殿や橘三郎殿や太郎大夫殿です。「かいごや子牛」は大聖人様です。本来は、「日蓮は日本国の主であり師であり親である」と『開目抄』にありますように、日蓮大聖人様が親のお立場です。ところがここで、時光殿等が親である、と仰せになることを重く拝さなくてはなりません。つまり、末法の御本仏日蓮大聖人様を御護りする檀那の立場の大切なことを示され、自覚を促されているのです。

 さらに、末法の御本仏として、一切衆生を成仏に導く大聖人様の身を包み、命を支える食物を御供養することは、仏を養い、その教えである法華経の真髄(三大秘法の南無妙法蓮華経)を継承することである、と述べられます。また、妙荘厳王や檀王が、仏道修行をする者に仕えたことで仏に成った例を挙げ、時光殿や橘三郎殿や太郎大夫殿が、仮りに経文を読んだり書いたりすることがなくとも、法華経を読んだり書いたりする大聖人様を供養するのですから、その人は必ず仏に成ることができる、と仰せです。

 日蓮大聖人様の信仰は「自行化他」の信仰です。しかし、なかには自行化他の信仰が難しい方もおります。そのような方であっても、御本尊様への真心からの御供養を実践することで、仏に成ることができる、との仰せを命に留めておきたいものです。

 財の供養であってもこのような大きな功徳があるのですから、法の供養である折伏の功徳は絶大であることもは絶対に忘れてはなりません。

 最後に、「是の人は仏に成ることは間違いありません」との法華経をを引かれます。御文の「是の人」は南条時光殿のことであり、本日ご参詣の皆さまのことです。大聖人様が、「ご参詣の皆さまは、必ず成仏が叶います」と励まして下さっていることを忘れないように、さらにご信心にお励み下さるよう念じます。

 虫の声がだいぶ賑やかになってまいりました。まもなく過ごしやすい季節を迎えます。熱中症対策の一環である、「お家でテレビ」から、成仏の修行である「お外で折伏」に切り替え、功徳を積んでまいりましょう。ご精進・ご精進。

 


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