日蓮大聖人御書

日蓮大聖人御書講義・法話集:平成28年12月1日永代経/日蓮正宗佛乗寺

『立正安国論』
〜「汝須く一身の安堵を思はゞ 先ず四表の静謐を祈るべきものか」〜

立正安国論:平成新編日蓮大聖人御書(二四九頁)

文応元年七月十六日  三十九歳

『立正安国論』 文応元年七月十六日 三十九歳 (御書・二四九頁)

 汝須く一身の安堵を思はゞ 先ず四表の静謐を祈るべきものか    

《語句の意味》

○汝=古くは、汝(な)貴(むち)。古代には相手を尊敬する語であったと思われるが、奈良時代には対等の、また鎌倉時代以降には目下に対する代名詞として用いられる。
○須く=漢文の再読文字で、・・をする必要がある。・・することが大切である、の意。
○安堵=安はやすらか・危険がない・しずか・楽しみ等の意。堵は垣根・へい・居所・住まい等の意。これらから、安堵は、住むところが安らか、危険がない、楽しみのある等の意として用いられる。
○四表=東西南北の四方のこと。周囲、ぐるりと囲まれた範囲。周りの人々。
○先ず=優先する、先にする、最初に、先頭に立つ、先に立って導く等の意。安国論の趣旨からすると、先頭にたって導く、と拝する。
○静謐=静も謐も、やすらか・穏やかの意。世の中が穏やかで落ちついている様。
○べき=助動詞べしの連体形で、・・・をしなければならないの意。
○ものか=形式名詞の「もの」に係助詞「か」が付いて、強い感動や意思を表す。

《意訳》

貴方が、あなた自身の幸せを思うのであれば(幸せを思うことが大切である)、自身のことを願うとともに、先頭に立って皆を導くことができるように祈ることが大切である

《解説》

日蓮大聖人様は鎌倉時代に誕生され、幼少から仏道修行に励まれました。その中で、念仏宗や真言宗や禅宗が乱立し、それぞれが自らの正しさを主張するが、果たしてお経文にはどのように説かれているのであろうか、と探求された結果、諸宗の教えは仏様の真実を伝えておらないことを覚られ、『立正安国論』を顕されました。

当時の我が国は、地震や台風などの自然災害や、戦乱などの人災が続いており、民衆は苦難の連続でした。この苦難を乗り越えるために人々は神仏の力を頼み、純粋な心で信仰に励みました。ところが、世の中が安定することはなく、災害の治まる気配はありませんでした。

日蓮大聖人様は、そのような世情をご覧になり、お経文に説かれている通りの信仰ではないことを指摘され、平穏な社会や生活を実現するために、仏様の仰せの通りに、素直な信仰に励むことを勧められたものが、『立正安国論』です。

『立正安国論』で、仏様の教えを信じ実践すれば、平和な世の中になることを教えて下さっておりますが、それでは、実際の信仰とはどのようなものであるかを示されたのが、つぎに挙げる御文です。

この御文で、信仰について、信心について、難しく考える必要はありません。ただ素直な心で仏様の仰せのままに、「南無妙法蓮華経」と御本尊様に向かって御題目を唱えれば大丈夫です、と励まして下さっております。

『妙一尼御前御返事』  弘安三年五月一八日  五九歳   (御書・一四六七頁)

夫信心と申すは別にはこれなく候。妻のをとこをおしむが如く、をとこの妻に命をすつるが如く、親の子をすてざるが如く、子の母にはなれざるが如くに、法華経・釈迦・多宝・十方の諸仏菩薩・諸天善神等に信を入れ奉りて、南無妙法蓮華経と唱へたてまつるを信心とは申し候なり。しかのみならず「正直捨方便、不受余経一偈」の経文を、女のかゞみをすてざるが如く、男の刀をさすが如く、すこしもすつる心なく案じ給ふべく候。あなかしこ、あなかしこ。
   五月十八日                       日蓮花押  
妙一尼御前御返事

《語句の意味》

○正直捨方便=正直に方便の教えを捨つ、と読みます。法華経方便品第二に説かれます。仏様の御心に素直に従うことが「正直」です。念仏や禅、また真言等の教えが方便です。仏様の仰るように、念仏や禅の教えを捨てなさい、と言うことです。
○不受余経一偈=余経の一偈をも受けざれ、と読みます。法華経譬喩品第三に説かれます。法華経のみを信じて、法華経以外の余の経典の一文一句であっても受けてはなりません、と誡められるものです。

《意訳》

信心と申しましても、特別のことがあるわけではありません。妻が夫を大切に思うように、夫が命懸けで妻を護るように、子供が母親から離れることがないように、法華経、釈尊、多宝仏、十方の全ての仏様と菩薩様、諸天善神たちを心から深く信じて、南無妙法蓮華経と御題目を唱えることが「信心」というのです。さらに、法華経の方便品や譬喩品には、「仏様の御言葉を素直に信じ、執着の心を捨て、法華経以外の教えを信ずることがないように」と説かれております教えを、女性が鏡を大切にするように、武士が常に刀を帯びているように、法華経から離れることなく、仏様のお心を我が心としてお励みなさい。以上謹んで申し上げます。     

 

以上


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日蓮正宗向陽山佛乗寺

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