乙御前御消息 (御書八九六頁)
女人は夫を魂とす。夫なければ女人魂なし。此の世に夫ある女人すら、世の中渡りがたふみえて候に、魂もなくして世を渡らせ給ふが、魂ある女人にもすぐれて心中かひがひしくおはする上、神にも心を入れ、仏をもあがめさせ給へば、人に勝れておはする女人なり。鎌倉に候ひし時は念仏者等はさてをき候ひぬ。法華経を信ずる人々は、志あるもなきも知られ候はざりしかども、御勘気をかほりて佐渡の島まで流されしかば、問ひ訪ふ人もなかりしに、女人の御身としてかたがた御志ありし上、我と来たり給ひし事うつゝならざる不思議なり。其の上いまのまうで又申すばかりなし。定んで神もまぼらせ給ひ、十羅刹も御あはれみましますらん。 |