第9回

「『ウォタユ』・・・かわいそう」
 先日、私の弟の子が我が家に遊びに来たときのことです。

 突然の悲鳴に驚いた私が駆け寄ると、その子が一本のスプーンを持って今にも泣き出しそうに立っていました。何が起こったのかと親に聞いてみると、スプーンで遊んでいたその子が、そのスプーンの先でコンセントを弄くり、ショートさせてしまったらしいのです。

 一瞬の火花とともにスプーンの先は黒く焼け熔け、それをみた私は一瞬ゾッとしましたが、二度と同じようなことをしないようにその子を諭しました。

 叱られると思っていたのでしょう。優しく諭してやると、またいつもの通り明るい表情に戻り、「コワカッタァー!」と大きな声で言いました。危険な遊びを繰り返さないようにと思い、「こんなに固いスプーンが、こんなになってしまうんだよ・・・だからもうやっちゃいけないよ・・・」等々と再度諭しました。すると、「ウォタユ、ウォタル・・・・カワイソー」と言いました。幼いせいでまだ言葉がはっきり言えませんが、何だろうと思った私が「ウォタユ?」と繰り返して聞いてみると、今度は「ミシャイユ、ミシャイユ、・・・」と言いました。

 最近、親に見せてもらったビデオのことを思い出したのでしょう。それは野坂昭如さん原作の「蛍の墓」のことでした。

 今、大人たちは様々な理由をくっ付けて、そして様々な詭弁を弄して、自衛隊を戦地へと送り出そうとしています。

 「ほたる、かわいそう」・・・3歳にも満たない幼児が言った、たった2語には人として最も大切な心が篭っているように思えてならない。

文責編集部